2009/3/31 火曜日

『PL62、出航!!』

小森陽一日記 16:57:55

「はかた」と名の付く船の就役式に出席したのはこれで二度目である。一度目は10年ほど前、白い船体にPL05と番号の付いた初代「はかた」だった。

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この初代「はかた」は実に想い出深い船である。「海猿」を書いていた頃、潜水士の取材や資器材、特にチャンバーの扱い方などはこの船の甲板でレクチャーを受けた。「トッキュー!!」や「我が名は海師」を書いている頃も、船長の話を聞きに行ったり、ヘリレスキューの様子を見たり、火災船の消防活動の映像を貸して頂いたり。ご飯を頂いた事もあれば、家族で船内を見学させて頂いた事もあった。そして映画「海猿」にはこの船が撮影に使われた。僕の創作活動で一番お世話になった船だと言ってもいい。そんな初代「はかた」は先日船名を「でじま」と変え、新たな赴任地へと旅立って行った。そしてやって来たのがPL62「はかた」である。

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初代よりも大きな新生「はかた」、これから大海原を駆けて様々な活躍をしてくれる事と思う。心からエールを送りたい。

「ガンバレ!PL62はかた!!」

2009/3/24 火曜日

『右を見ても左を見ても………』

小森陽一日記 11:35:53

この日、帝国ホテル孔雀の間は華やかだった。右を見ても左を見てもそうそうたる顔触れ、マンガ家、原作者、歴代編集者が一同に集った。週刊少年マガジンと週刊少年サンデー創刊50周年、講談社と小学館が手を組み、大同窓会を行ったのである。

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日頃、あまりパーティには出席しない僕も、編集長の厳命で重い腰を上げた。広間に行ってみると、いるわいるわ、本当に豪華なメンバーだった。すっかり一ファンと化して、隅っこで呆然と眺めているしかなかった………。

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創刊50周年、半世紀の間雑誌が続いた事は、ここにいるマンガ家、原作者、編集者が身を削って作品を作ってきたからである。そして読者の皆さんがそれを受け止め続けてくれた結果である。まったく幸せな関係だと思う。そんな事を想っていると僕の隣で編集さんが呟いた。
「次の同窓会、100周年にはここにいる人達のほとんどがいないでしょうね……」
僕も50年後には91歳、どう考えてもこの場に集う事はないだろう。そう考えてみればとても歴史的なイベントに参加させて頂いたという事だ。大切な記憶の一つとして大事にしていきたい。

2009/3/17 火曜日

『マケット』

小森陽一日記 11:23:01

マケット、即ち彫刻である。デザイン画を元にして粘土で立体物を造る。そうする事で画では見えない部分が立体的に見えて来る。これを取り込んでデータ化し、CGを作っていく訳だ。『トイ・ストーリー』のバズ、『バグズ・ライフ』のホッパー、『Mr.インクレディブル』のヴァイオレット、ピクサーのキャラクター達もこうやって生み出された。

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キットが大好きな僕としては、マケットのチェックは至福の時だ。立体化されたキャラクターは実に生きいきとして輝いて見える。「早く動かして!」とせっつかれている気さえする。まだ詳細を公表するにはいかないのが残念だが、僕が脚本を担当させていただいた新作映画のキャラの一部である。スクリーンの中で彼等が大騒動を起こす様を一日も早く見てみたい。どうか皆さんもその日をお楽しみに!!

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2009/3/10 火曜日

『ドーム侵入禁止』

小森陽一日記 10:12:25

先日、「マッシュ」の原稿をバタバタと終らせてドームへ向った。オープン戦を観る為である。

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この日は秋山新体制になって初の本拠地、新生ホークスのドームお披露目であった。
対する相手は知将野村監督率いる楽天イーグルス、近年めきめき実力を付け、もう昔のお客様のイメージはない。どころか苦手意識すらある手強いチームである。僕は3回途中から球場に入った。すると………、「カキーン」という実に気持ちのいい快音を響かせて白球がスタンドに吸い込まれていく。楽天鉄平のツーランホームランだった。そこからあれよあれよの釣瓶打ち、気付けばこの回6失点のビッグイニングとなった。
「小森さんが来た途端試合が動いた」
そう言われるのは分かっていた。自分でもあまりの間の悪さに唖然としていたから。
「疫病神なんじゃない」
そう言われても返答のしようもない………。

以前から試合の勝ち運がない。そんなに頻繁にドームに行く訳ではないのだが、行くとこてんぱんに負ける。「今日はシーズンに一度、あるかないかの負けだ」、王監督がそんなコメントを出した最悪の試合も観客席にいた。この日も結果は6-0でホークスの完封負け。大勢詰め掛けていたお客さんもジェット風船を上げた直後、津波のように帰って行った………。

今シーズン、開幕すらしていないのに僕のドーム行きは早々と終了した。選手とファンの皆さんに申し訳が立たない。運のない奴はテレビの前でそっと応援する事にします………。

2009/3/3 火曜日

『キャラの宝庫』

小森陽一日記 14:02:11

舞台は大阪西萩、バリバリの下町。その一角で小学5年生の少女は来る日も来る日もホルモンを焼いている。そう、アホな父親のせいで………。
「ウチは日本一不幸な少女や」

はるき悦巳氏が放ったご存知「じゃりん子チエ」。漫画アクションにて19年という長期連載を成し遂げた傑作マンガである。基本的にグルグルマンガ(成長も後退もしない。舞台設定はそのままでエピソードが変化する)なのだが、まったくもって飽きさせない。それは物語もセリフも一級品だからだ。だが何より素晴らしいのはキャラクター、そう、「じゃりん子チエ」はまさにキャラの宝庫なのである。

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マンガ界において「キャラ不在」が叫ばれる昨今、このマンガにはこれでもかというほど際立ったキャラが続出する。主人公の竹本チエは言うに及ばず、チエの祖母、人情家で激情家、ケダモノの母菊、額の三日月が過去を物語る月の輪の雷蔵こと二足歩行の小鉄、一升超すと人格が変る元バクチ屋の主人で現在お好み焼き屋の百合根、ド迫力の文学者にしてチエ誕生に深く関わる責任者、花井拳骨。そしてそして、チエのパパであり、ヤクザをどつく事を生き甲斐とした、正真正銘のアホでカスでスカタンでバクチ狂いの甲斐性なし、竹本テツ。だが―――、僕はもうこのテツのやる事なす事が好きでたまらない。チエちゃんには「ほんならいっぺん暮らしてみたら」と冷たく言われそうだが、僕は根っからテツファンなのである。

どこからどうやってこんな濃いキャラが生まれて来たんだろう………。はるき氏の才能、大阪という街の風土、独特の食文化、そして関西弁、きっと色んなものがない交ぜになってるんだろうなぁ。なんだかまた大阪に行きたくなった。色んな景色や色んな人を眺めながら、熱燗傍らにガブリとホルモンを頬張りたい。

追記 「じゃりん子チエ劇場版」7月25日 Blu-rayにて発売!!

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