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造型工房パオ
宇宙怪獣 レギオン
Chapter of 〜LEGION(Mother Legion)〜
『ガメラ2 レギオン襲来』より 宇宙怪獣 レギオン(マザーレギオン)
造型工房パオ
 

今でもその時のことはよく覚えている。スクリーンを見つめながら興奮した。血沸き肉躍った。ゾクゾクした。こんな体験は稀だった。
(日本映画もまだまだ捨てたもんじゃない!)
偉そうにそんなことを思った。そう思わせてくれたことが素直に嬉しかった。「ガメラ2」は怪獣映画という範疇を越え、一つの娯楽大作として成立していた。その最たる理由はガメラと戦う適役の存在、レギオンだろう。「草体」「兵隊」「母体」の三要素がしっかりと絡み合い、地球侵略における道筋がサイエンスフルに展開していく。レギオンの行動は意味のない破壊ではなく、繁殖という種の生存本能に貫かれており、それを邪魔するものは何であれ排除しようとする。例えば電磁波がそうであり、自衛隊がそうであり、ガメラがそうである。生き残る為に抗うものと全力で戦う。分かりやすく説得力のあるロジックが展開するからこそ、終盤で自衛隊とガメラの共闘という圧倒的なカタルシスが生まれる。あぁ、思い出すとまた観たくなってくる。それほどに魅力的な作品だ。



レギオンの中でも特に強力な存在がマザーレギオンと呼ばれる母体だ。女王であり母だから強いのは至極当然であり、大きさ、迫力、パワーとすべてにおいてガメラを圧倒している。またそう見えるように計算されたデザインも素晴らしい。昆虫型であり甲殻類のようでもあるマザーレギオン、先端はどれも鋭利な刃物のような形状をしていて、一見しただけで攻撃的な性格だと分かる。ぱっと見、どんな風にスーツアクターが入っているのか分からない複雑さが怪獣好きの魂を激しく揺さぶる。かつてガメラと戦った深海怪獣ジグラの曲線と硬質感を引き継いでいるような雰囲気もツボである。兎に角やたらとカッコいいのだ。そのマザーレギオンのカッコ良さをあますところなく、いや、むしろそれ以上に増幅した造型物が、造型工房パオが96年に放ったレジン版キットである。造型は畑中正義氏、ボークスJr.では氏の作品をどれほど作ったことか。リトラ、セミ人間、ミイラ人間にジラース。緻密であり、繊細であり、時として大胆なボーズで魅せる造型には心から魅了された。このマザーレギオンもHJに載った写真を穴が開くようにして眺めていた記憶がある。価格は5万円だった。当時としては(おっ、高い…)という感覚だったが、今となってはこのボリューム(パーツ数は49!)でこの値段、とんでもなく安い設定をされていたのだと思う。その頃の僕はウルトラ一本で突っ走っていたから、映画怪獣にどれだけ惹かれても手を出すことはなかった。逼迫した財政事情がそれを許さなかったのだ。だが、大人になるにつれ、多少の財政的余裕と心境の変化が生まれた。ようやく映画怪獣のキットを集め出す頃には、パオのレギオンは既に伝説と化してしまっていた。ごく稀にオークションに出るが、値段が爆上がりしてとても手を出せるようなものじゃなかった。


(いつかはご縁があることを願って……)
そう、マザーレギオンは神頼みしていたほどのキットなのである。
それが今回、我が家にやってきた。原型師の畑中さんから直接譲り受けたのだ。聞けばワンフェス展示用に作ったものとのこと。つまり、あのHJに載っていた作例モデルである。しかも、当時使用したドールヘアー3点も出てきたということで、インストと一緒に送ってくださった。なんという奇跡、なんという幸せ、ありがた過ぎて言葉にならない。素晴らしいご縁を感じると共に、やはり怪獣の神様はいらっしゃるとあらためて思った次第だ。



彩色にはほとんど手を加えていない。埃を掃い、色剥げした部分にのみ色を乗せ、弱くなっている接合部をしっかりと止めたくらいである。当時のままを保存するのが一番良いと考えた。このマザーレギオンが僕のところに巡ってきたのはおそらく理由がある。自分だけのものにするのではなく、広く大勢の人に怪獣ガレージキットの素晴らしさを伝える為だ。口幅ったいが、どうやら僕はその役に選ばれたように感じる。畑中さんの素晴らしき造型作品、しかるべきタイミングで多くの方に見ていただけるような機会を作りたいと考えている。






全高 重量 パーツ数 付属品
310mm 2600g 49点 ドールヘアー3点
材質 原型師    
ウレタン樹脂 畑中 正義