吉野家徳兵衛
用心棒怪獣 ブラックキング
Chapter of Return of ULTRAMAN 〜BLACK KING〜
第37話 『ウルトラマン夕陽に死す』
第38話 『ウルトラの星光る時』  より 用心棒怪獣 ブラックキング
 


まるで悪夢のような前後編だった。新マンの世界に彩りを添えていた坂田兄妹の死……。あまりにも唐突であり、しかもそれが現実と地続きの路上で、白昼堂々と行われるという展開に強い衝撃を受けた。
「おのれ、ナックル星人め……」
拳を握り締め、固く復讐を誓ったのは新マンだけではなかった筈だ。だからなのか、ブラックキングの記憶があまりない。確かにいたなぁ〜という程度の存在感しかないのだ。スペシウム光線も効かず、ウルトラブレスレットも弾き返す強敵にも関わらず。繰り返しになるが、それほどナックル星人の残虐行為がすべてを覆ってしまったという証拠でもある。とはいうものの、あれから半世紀近くが過ぎた。ここはちょっと冷静になってブラックキングに向き合っていこうと思う。キットは吉野家徳兵衛から。ワンフェス2010年冬、テロチルスに続いて放たれた新マン怪獣だった。原型を担当したのはお馴染み浅川洋氏。造型に対してはもはやどうこう言うレベルではない。間違いなくブラックキングの決定版とでもいうべき見事さである。それにしても浅川さん、すでにこの頃から30cmを超える作風だったようだ。浅川さんにすればおそらくこれが怪獣の立体化に一番適したサイズ感なのだろう。どっしりと重みを感じられるし、どの角度から見ても怪獣の魅力に溢れている。ただ、やっぱりデカいのだ……。このサイズを何体も飾ろうと思うと、それなりのスペース、家の間取りが必要となってくる。まったくコレクター泣かせである……。組み立てに苦労することはないが、ボディは中空成形なのできっちりと接合部分を確認してから張り合わせたい。僕はマジックスムースを使用して先にボディのみを接着し(この時、ズレ防止の輪ゴムは必須)、一晩置いてしっかりと乾かして足と尻尾を取り付けた。ここは慌てずに作業を進めたい。



彩色に関してもそれほど難しくはないだろう。ご覧の通り、全身は黒一色、角や牙は金色という出で立ちである。ただ、だからこそ思案のしどころなのだ。見せ場をどうするか、そこが腕の見せ所ともなる。本編を観たりムック本を眺めたりしながらモウソウし、山をブチ割って現れるシーン、全身土埃にまみれた雰囲気を出そうと決めた。いつものようにガイアの艶消し黒をベースにして、ミスターホビーのジャーマングレー(40)を上から被せた。金色はガイアのEXゴールドを使い、身体との繋ぎ目にはジャーマングレーを塗り込んだ。しっかり乾燥させたら筆で身体のあちこちに茶色を描き込む。赤褐色(131)を強めたり弱めたりして塗り込んでいく。頭頂部の大角にも薄くラインを引いた。金色はそのままでは面白くないので、タミヤのダークグレイ(XF−24)を乗せ、テッシュで拭き取った。身体の方も同じ要領で、サンドイエロー(119)をエアブラシで足や尻尾・手の周りに重点的に吹き、その上からタミヤのデザートイエロー(XF−59)を乗せてはテッシュで拭き取った。最後に残るのは目だ。新マン怪獣は総じて目が大きい。クリクリまなこが特徴の一つである。一歩間違えば可愛い感じになってしまうので、バランスを確認しながらたんに赤、たんに黒と決めつけないで、何層もグラデーションで表現することを心が掛けた。
制作に手間はかかるが、自分なりの表現を突き詰めていけるのがガレージキット作りの楽しいところ。つまりはオンリーワンだ。キットと向き合い、自分ならどう魅せるかを考えるのはとても大事なことだと思う。













全高 重量 パーツ数 付属品
335mm 2100g 19点 なし
原型師      
浅川 洋