アレイド
毒ガス怪獣 ケムラー
Chapter of ULTRAMAN  〜KEMULAR〜
第21話 『噴煙突破せよ』より 毒ガス怪獣 ケムラー
アレイド ウルトラマンシリーズ第十八弾
 

制作部屋には資料が沢山詰まった本棚と、塗料や工具類を並べた棚がある。その反対側にはこれまた大きな棚があって、下地塗装まで終えたキット達が今か今かと完成を待っている。しかし、ケムラーはそこにはいなかった。直近で作る予定もなかった。なら、どうしてトライしたのか? ……分からない。あの大きな目玉に呼ばれたとしか言いようがない。キットが入った箱の写真を見た瞬間、雷に打たれたように痺れた。「汝、ケムラーを作れ」まさに怪獣の神様のお告げがあった。


大きく口を開け、片方の前脚を上げて迫りくるようなケムラーの姿。これはムック本などでよく見かける有名なスチールである。よく見かけるということはそれだけ誰の脳裏にも記憶もされているということだ。兎角、似てる似てないの話題になるキット業界からすれば、簡単にジャッジされるというリスクもある。それでも、原型の浅川洋氏はこ のスチールに挑んだ。ケムラーならばこれ以外にない!という気合のチャレンジだろう。 いや、圧倒的な自信なのかもしれない。かくして結果は御覧の通り。360度、どこからどう見てもこれ以上ない完璧なケムラーが誕生した。



制作はひたすら楽しんだ。どんな色を乗せようか、それを考えること自体面白かった。塗装する前に決めたのは一つ、ケムラーの体色は一言で言い表すことが難しいので、汚くしてやろうということだった。本編を観ても地面から現れるし、口から猛烈な毒ガスを吐く。街を破壊して埃にまみれ、戦車隊の攻撃では辺りが白く霞むほどの白煙に包まれる。つまりは煙と土埃がケムラーの色なのだ。いつものようにアクリルの黒から立ち上げて、徐々に灰色で明度を上げていった。スチールを見ると目の周りや皮膚の窪みには所々に茶色が見えるので、タッチをつけるように筆で塗り込んでいく。それが済んだら全体を青みがかった灰色で包み込むように塗った。更に土埃を加える為、エナメルのデザートイエローを被せては拭き取ることを繰り返した。細かいことは気にせず、思う通り大胆にやればいい。甲羅の模様も「赤」「白」「緑」「青」を順に手描きして、「黄」で縦ラインを描く。その上から容赦なく汚しまくった。完成した写真を浅川氏に見せたところ、「これ、生きてますよ」という言葉をいただいた。実に幸せなことだ。全力で楽しんだからこその証なのだと思う。









全長 重量 パーツ数 材質
420mm 1700g 22点(急所は透明レジン製) ウレタン樹脂
付属品 原型師    
なし 浅川 洋