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第19話 『2020年の挑戦』より 誘拐怪人 ケムール人
VOLKS JUNIOR ULTRA Q WORLD NO:002
 

「カナカナカナ」、夜の公園に響くヒグラシの鳴き声のような奇妙な音。由利子のボディガードとして警視庁からやって来た老刑事宇田川は、コートからトランシーバーのような機械を取り出して辺りを見回す。すると門の前に奇怪な影が―――!歪んだ顔に段違いの目がギロギロと動く。あまりにも異様なその生物は、2020年という遥かな未来から人間の若い肉体を奪いに来たケムール人だった…………。



まさに異様である。この言葉がこれほどピタリと当てはまるのも珍しいくらいに、その姿、声、動き、どれをとっても異様である。優れた発想とすぐれた造形とすぐれた演出の三位一体が、世代を超えてインパクトを与え続ける怪人を生み出したのだ。ケムール人は怖い。忘れようとしても忘れられないのが辛い。パトカーの静止を振り切って走る特異な姿、細く伸びた指先を小刻みに震わせるポーズ、自らの肉体を変形させて巨大化するシーン、絶命する間際、体液が頭の先端にある穴から噴出すという生理的な嫌悪感。世の少年少女にトラウマを植付けてしまったのも無理からぬ話である。先日、円谷プロにお邪魔した際、「倉庫を大掃除してたら、昔の観覧車の模型が出てきまして…………」との話があった。観覧車と来ればケムール人、マニア諸兄ならばすぐに連想できる事であろう。案の定、その観覧車は「2020年の挑戦」に使用された観覧車であった。怖いけれど見たい。そんな気持ちにさせたケムール人だからこそ、逆に集中力を高めて話に見入ってしまった。その結果、シーンの隅々まで記憶するはめに陥ったのである。まさに本末転倒と言わねばなるまい。ケムール人の造形は、この時期ヒトサライをしでかした宇宙人を連発していた林氏である。両手を広げてこっちを見ているケムール人は、くぐもった笑い声を上げながらゆっくりと迫ってくるようで恐ろしい。塗装は黒や緑、青などを重ね吹きして沈んだ体色を表現してみた。マスキングもバルタン星人の模様のようにきっちりとではなく、大まかに大胆に、回りがぼやけるようにしてやると雰囲気が出る。とはいえ、あまり雰囲気が出ても怖くなるのだが…………。

全高 重量 材質 原型
190mm 90g ウレタン樹脂 林 功次郎