2009/11/10 火曜日

『特撮に想いを馳せた夜』

小森陽一日記 11:04:28

今時の人は特撮と聞いてもピンと来ないかもしれない。特撮とは特殊撮影の略称、創造力と技術力とそれを成し遂げようという努力によって産み出された、誰も見た事のない映像世界だ。今のCGを否定する気はまったくないし、CG映像も大好きだ。だが、特撮はやはり自分の原体験、血肉として、特別なものとして今も尚僕の中に深くある。

それは実に唐突だった―――。
ある日、佐原健二さんからマネージャーを兼ねた息子さんを通してメールが届いた。「福岡で仕事があるので、それが済んだら食事をしよう」というお誘いだった。もちろん伺わない訳がない。万難を排して駆けつけます!との返事をさせて頂いた。僕にとってはスクリーン上の、ブラウン管の中の、そして愛すべき特撮作品の主役、佐原健二さん。「空の大怪獣ラドン」では炭鉱技師、河村繁、「マタンゴ」では漁師、小山、「モスラ対ゴジラ」では金の亡者、虎畑、「ゴジラ」シリーズでは最多出演を誇り、「ウルトラQ」では主役の万城目淳………、特撮街道をひた向きに歩かれ、そのキャリアは55年、今も尚元気で新作に出演を続けられている。そんな佐原さんと酒を酌み交わし、その夜は当時の話をたっぷりと聞かせて頂いた。東宝に入社した頃の話、ゴジラへの想い、「ウルトラシリーズ」の裏話………、差し向かいでこんな話が聞けるなんて、本当に夢のようである。

「252」の最初のプロットを書いた時、崩落したトンネルの中に閉じ込められる老夫婦がいた。僕はその夫を佐原さんのイメージで書いた。何度か設定の変更を繰り返す内にその老夫婦はいなくなってしまったのだが………、もしその役が固まっていれば、僕はプロデューサーに佐原さんの名前を出すつもりだった。いや、佐藤Pには一度そういう話をしたかもしれない。
憧れの人と仕事をご一緒する事は全然諦めていない。念じていれば何かの折には必ず実現するものだ。佐原さん、どうかいつまでもお元気で。必ずお声を掛けに参ります!

「素晴らしき特撮人生」 佐原健二著 小学館
ご本人の人となりがとても表れている本です。そして特撮の事が、想いがよく伝わってきます。
皆さん、是非ご一読を!

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