2008/2/26 火曜日

『L』

小森陽一日記 17:53:55

先日、松山ケンイチくんに会った。スタッフとは少し離れた場所で静かに椅子に座っていた。決して気難しいんじゃない。気さくに話も出来るしニコニコとよく笑う。だが、彼の周りだけ磁場が違っているかのような感じがした。例えて言うなら「憂い」………。まだ22歳、だが、とてつもない雰囲気のある役者さんだ。

「デスノート」はもちろん読んだ。映画も前・後編合わせて3度は観ている。月とLの攻防がたまらない。藤原くんと松山くんの火花を散らすような攻防が本当にたまらない。そしてL、再起動―――。仕上がるのを楽しみに待っていた。

「L Change The World」、原作には描かれていない23日間の物語。脚本作りに四苦八苦しているのは時折聞いていた。撮影に間に合うのか心配もしていた。撮影に入ってからも色んなトラブルがあったのも知っている。しかし仕上がった。それも素晴らしい作品となって。プロデューサーが佐藤さんだったから、監督が中田さんだったから、そしてLが松山くんだったからだと思う。間違いなくそう思う。 

まだ未見の皆さん、是非ご覧になって下さい。どの虜になるかはその人次第。しかし、何かの虜になる事だけは保証します。

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2008/2/19 火曜日

『タイミング』

小森陽一日記 18:02:36

高知より戻ってホッとする暇もなく、2泊3日で上京した。また美味しいもの食べて気持ちよーく飲んでと思われる方もいるかもしれない。もちろんそれは否定しない。―――が、東京での僕は本当によく働く。今回も打合せ三昧の時間を過ごした。

講談社のマガジン編集部で打合せをする前、社屋と写真棟を繋ぐ渡り廊下へと向った。まったく知らなかったのだが、そこは講談社に所属するカメラマンさんの個展会場になっている場所なのだそうだ。廊下は直線で20mほど、片側はガラスなので写真はもう片方の壁際に並べて展示される。当然、限られたスペースという制約がある訳だから、誰もかれもが個展を開けるものではない。作品のクオリティーはもちろん、写真部の長の厳しい選択眼に適わなければここに写真を飾る事は出来ないのだ。そんな厳しい競争を勝ち抜いて目下展示されているのは怪獣達、それもどこかで見慣れたものばかり………。「ULTRA WORLD COLLECTION」の撮影を行った米沢カメラマンが、今回その栄誉を勝ち取り、個展を開く事と相成った訳である。おめでとう、米沢さん!!

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編集部でMさん、Tくんともろもろの打合せを行った後池袋へ移動、「トッキュー!!」の打合せはアンコウ鍋を囲んで行われた。今回、アンコウ鍋をリクエストしたのは久保ミツロウ、おかげで僕も不思議な味を堪能する事が出来た。その後、他のメンバーと別れて僕はツインズのS氏、小学館のKくんと合流、もろもろの打合せを夜更けまで行った。
次の日もツインズのS氏と打合せの続き、夕方より講談社で打合せ、夜は日テレS氏と銀座でお刺身をつまみながらの打合せ、やがて日本アカデミーに出席していたM監督とAPのSさんが加わり、日付が変る頃にはツインズのS氏もやって来て話をしたのだった………。どうです、ちゃんと仕事もしてるでしょう。

さて、今回どうして副題を「タイミング」としたのか?これからそれについて語りたいと思う。以前よりそうなのだが、僕が打合せで上京したり取材旅行に出掛けるタイミングでなぜだか娘が熱を出す。旅先から自宅に電話すると「実はね………」と妻が言う。僕も当然そうなのだが、仕事仲間も「また………?」と言う。それくらいこのタイミングは普遍化しているといってもいい。そして今回もまた………である。自宅に戻ったら娘の様子がおかしかった。あきらかにいつものキレがない。
おでこを触ると案の定熱っぽかった。次の日には40度近くまで熱が跳ね上がり、腹痛、頭通、ついには嘔吐までやってきた。これはいかんとすぐに病院に運ぶ。すると………インフルエンザA型。軽い脱水を起こしていたので点滴まで受けたのだった………。

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仕事で寝不足、帰ってからも看病で寝不足………、これは久々の大型バッドタイミングの到来である。死にそうな顔で苦しむ娘の顔を見るとそうそう眠る訳にもいかず、とにかく落ち着くまではと頑張った。そして今、病は癒えて………相変わらず憎たらしい悪態を付く娘へと元通りになっている。それはまぁ百歩譲っていい。ただ次からはこのタイミングを外してくれ。きつい………。頼むから………。

2008/2/12 火曜日

『高知へ行く』

小森陽一日記 17:53:25

この連休を利用して、急遽高知へ行く事にした。目的は高知県立美術館で行われている造型文化展を見に行く為だ。

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この催しの中に、高知在住の原型師であり、年末、講談社から出版した怪獣キット本(ULTRA WORLD COLLECTION)にて対談させて頂いた高垣利信氏の作品も展示されている。しかしながら、原型はメーカーの買い取りであったり、型を抜く時に壊れたり、芸術家特有の「過去には囚われない」という思想もあってか………、原型師の手元にない物も多い。よって今回の展示は、高垣氏の作品を持つファンも一役買う事になった。恥ずかしながらこの僕も、ボークス時代の高垣氏の作品を2体ほどお貸ししている(ゴルゴスとピット星人)。展示物を見た後、高垣氏と美術館の喫茶店でしばし話しをした。まだ造型途中の新作を持参頂き、それを肴にコーヒーを飲む。まさに至福、絶品の時間だった―――。

今回の旅行は家族と、妻の両親も一緒だった。その夜、高知市内に住んでいる叔母(叔父は残念ながら出張中)と従兄弟夫婦が一堂に集った。メインディッシュはもちろん魚、カツオのタタキである。実を言うとカツオのタタキ、しかも高知で食べるタタキに目がない。今回もタタキが食べられる事を狂おしいばかりに楽しみにして来た。叔母に連れられて行った店のタタキは驚くほど肉厚で温かく、臭みなんて欠片もない極上のものだった。食べるのに夢中で写真を撮る事を忘れてしまったほどだ………。

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翌日、高松から戻って来てくれた叔父の案内で、五台山や竹林寺、植物学者牧野富太郎博士の植物園、桂浜の水族館と様々な場所を見て歩いた。幸い天気にも恵まれ、楽しい一日を満喫した。

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ただ一つだけ不満を言うならば、翌日はタタキを食べなかった事………。
前夜、食べ過ぎたからなのかはしゃぎ過ぎたからなのか原因は分からないけれど、僕一人腹の調子が思わしくなく………、おかげでタタキどころかまともなものが食べれなかった。朝、昼、晩タタキ三昧にしようと思っていたのに悔しくてならない。――――まぁいい。こうして心残りが出来た訳だし、また近々高知に出向く理由が出来たという事だ。

高知県立美術館「高知県立竜宮城~高知の造型文化展~」 
※2月24日(日)まで

2008/2/5 火曜日

『道具』

小森陽一日記 17:27:40

本日、我が家のクローゼットにある太い柱の位置が変った。引越しの時、こちらの測り間違えで柱と収納スペースの間隔が数ミリ狭く、予定していた箪笥が入らないという失態をやらかしてしまっていた。それを修正したのが大工さん、僅か一日半でのお仕事だった。動く度にガチャガチャと腰のものが鳴る。ベルトに挟まった様々なカタチの道具を見もしないで取り出し、自在に扱って、仕事をこなしていく。実に素晴らしい―――。

道具を見るのが好きだ。海保の、消防の、医者の、その職種に息づく道具、使われながら改良され、発展してきた色々な道具。そしてまた、個人個人が自分の使いやすいように工夫を加えたスペシャルな道具、その世界やその人が道具を通して透けて見えるのがたまらない………。

道具に惹かれるのは、僕の仕事がほとんど道具らしいものを使わないからかもしれない。どこにでもあるパソコンと、どこにでもある机、どこにでもあるペンを使い、原稿を書く。工夫する事と言えば痔にならないようにクッションの位置を気にするとか、椅子の高さを調節するとか、これは打合せ用のペン、これは手紙用のペン等太さやグリップ、滑りなどで使い分けているとせいぜいその程度だ。

いや待てよ、キット作りとなると道具に拘るな………。ドライブラシ用に毛先を切り取ったり、爪楊枝の先端を鋭くしたものから丸く潰したものまで数種類用意したり、カッターのグリップに輪ゴムを巻いて滑り止めにしたり………。

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道具からその人が透けて見える………。
娘が小学校一年生の時、「パパのお仕事は?」と先生に尋ねられて「怪獣を作る事です!」と自信タップリに答えていたのはあながち間違いではないのかもしれない………。

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