2009/5/26 火曜日

『流れには逆らえない』

小森陽一日記 17:16:55

娘の家庭訪問で担任の先生が我が家に訪ねて来られた時の事だ。一通りの話しを終えてさあ帰ろうかとされている時、
「先生はプラモがお好きなんですか?」
と切り出してみた。子供の頃、ラジコン屋になるのが夢だったと、授業参観後の懇親会で語っておられたと妻から聞かされていたからだ。
「えぇ………まぁ………」
50代半ば、白髪でベテランの風貌を醸し出している先生が、一瞬照れたように笑われた。その笑顔を見て、
「実は僕もキット作りが趣味で………、宜しければ見ていかれますか?」
と声を掛けた。我が家は自宅と仕事場が廊下で一続きになっている。
「それじゃちょっとだけ………」
先生は申し訳なさそうに、仕事場へと続く廊下を歩き出した。そして一歩足を踏み入れた瞬間、
「――――わ!?」
ズラリと並んだ怪獣キットを夢中で眺める先生、その口からはプラモへの熱い思いが次から次に溢れ出た。その顔は本当に少年のようだった………。

義理母が時々人を連れて来る。
「友達の息子さんがね、あんたのコレクションがどうしても見たいって」
時にはこんな事も言われる。
「あんた一人で楽しむなんて贅沢!他の人も自由に見れるように開放しなさい!」
娘の友達も見にやって来る。
「ねぇ、これどこで買ったと?」
「違う違う、おじさんが組み立てて色ば塗ったと」
「えー!!」
元円谷プロのM社長や桜井浩子さん、円谷プロのKさんからは、
「東京で展覧会やらない?」
そんな事を言われたったけ。

趣味が嵩じて怪獣の原型師さんやそのファンの方とも親しく付き合わせて頂いている。
多くの方が僕の書いたキット本を購入し、好意的に受け止めてくれている。先日もある原型師さんからこんなメールを頂いた。
『小森さんのあのような活躍が、衰退しそうな怪獣ガレージの世界を救っているのは間違いないです!』

福岡で開いた個展から今年で5年、そろそろ次のタイミングが来ているのかもしれない。もちろん忙しい。夏には新作がスタートするし、小説や映画もやらなければいけない。でもね、流れには逆らえないから………。もちろん僕が勝手にそう思っているだけで、具体的な事は何一つ決まってはいない。でも、やってみようかな、そう思う事から全てはスタートする。そして今、やってみようかな、そんな風に思っている。

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