2011/11/15 火曜日

『その扉の向こうで』

小森陽一日記 10:31:56

東宝撮影所に行った。今年の六月以来だから五ヶ月振りか。あの頃は雨でも蒸し暑かったが、今は上着がないと寒い。それだけ季節は巡った。
  
新しく出来たピカピカのスタジオではなく見慣れた丸い屋根の方、古くて厳しいスタジオの前に立つ。No.9と書かれた重たい鉄の扉を開けると、そこには信じられない光景が広がっていた。巨大なプールに浮かぶ鉄の棺桶、いや、箱舟、いや……。

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「海猿4」、確かに今の邦画界でこれほどの規模の撮影が出来るのは他にないかもしれない。それくらいこのシリーズが育ったという証なのだろう。セットがリアルだとか巨大だとか言う前に、このテーマを小説でもマンガでもなく、実写化に挑めるという現実に驚く。埃と湿気の混ざり合ったスタジオの中に立ち、撮影風景を眺めながらそんな事を考えていた―――。

とは言え、役者さんには酷な作品だとつくづく思う。2を撮影していた時、ずぶ濡れの大塚寧々さんに、
「これまでに一番大変だと思った作品って何ですか?」
と質問をしたら、
「今」
と即答された。愚問だった。もう苦笑いするしかなかったもんな……。
それは今回もまったく一緒だ。役者さんの全身はずぶ濡れ、カットが掛かる度に恒例の海猿温泉に浸かる光景……。もう愚問はなしだ。
「風邪だけは引かないように気をつけて下さい」
心の中で「ゴメンナサイ」と思いつつ、言葉に出して言えるのはそれだけだ。

もちろんそれは羽住監督以下、大勢のスタッフにも言える。朝早くから夜遅くまで、水に浸かりながらの撮影は心底体力を奪われると思う。それでもスタジオの中は元気な声が響く。士気の高さには目を見張るものがあった。この空気感は必ずフィルムに映る。そんな魂が入り込むから、人はこの作品に魅かれるんだろう……。

来年の夏、この作品が大きな拍手を持って迎えられる事はもはや間違いない。その時を楽しみに待ちつつ、この作品と肩を並べるような新たな作品を生み出していこう、そう強く思った―――。

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