2008/1/22 火曜日

『チョイス』

小森陽一日記 17:07:14

久し振りに服を買いに行く。棚に置かれたもの、ハンガーに掛けられたもの、袋詰めにされたもの、蟻の巣のような狭い通路を巡りながら服を選び取って行く。今回はその中から4着を選んだ。 

選ぶという行為。我ながら、随分変ったな………と思う。昔は何に対してもほとんど選ぶという事がなかった。ご飯は決まって「カレー」か「ハンバーグ」か「ラーメン」。車は動けばいい。靴は履ければいい。もちろん服は着れればいい。まったく同じ白いシャツを買い揃え、ひと夏を同じ格好で過ごして呆れられた事もある。「ドラマの中だけかと思ったけど、ほんとにこんな人がいるんだ」と………。
シンプルな男はカッコいい。果して本当にそうなのかはわからない。ただ、いつの頃からか僕の中に、選んだり迷ったりするのは恥ずかしいという想いが芽生えたようなのだ。
「これ、どっちがいいかな?」
と聞かれれば、
「これ」
と即答する男。
「将来、この道に進もうか、それとも違う道にしようか迷ってるんだよね」
と言われれば、 
「この道が合っていると思う!」
と迷わず言う男。
思い返せば自分はこんな感じだった。だから、どっちにしようかなぁなんて他人の前で迷える筈もなく………、即断即決の男らしい男に自分を仕立て上げて行ったように思う。

どれにしようかな?
沢山あるものから好きなものを選ぶ。選んだものがもっとも自分に合っているかどうかは分からないが、選んでいる時に流れる時間は確かに楽しいものだ。自ら料簡を狭めてきたせいで、色んなものを沢山見過ごして来た。今更、地団駄を踏む思いである………。
男四十にして、ようやく呪縛が解けようとしている。

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