2012/12/18 火曜日

『化学反応』

小森陽一日記 13:18:35

沖縄の金城家を訪ねて数日後、荷物が届いた。送り主は桜井さん。中を開けて見ると一冊の古い本が入っていた。「金城哲夫シナリオ選集」。奥付には昭和52年初版発行と書いてある。「泣いてたまるか」や「ウルトラQ」、「ウルトラマン」、沖縄芝居の台本まで収録されている。読んでいると身体が温まってくる。描写がとても活き活きとしていて生命感に溢れているせいだ。きっと「エイ、ヤッ!」という具合に一気呵成に書き上げられていたんだろう。筆の勢いが伝わってくる。常人の何倍ものエネルギーで人生を駆け抜けた金城さん。でも、叶うなら色んなお話をしてみたかった。お互いの琴線に触れた色んな作品を肴に、夜更けまで語り合ってみたかった。
  

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琴線に触れると言えば――この人の作品にはぐっとくる。業田良家さん。一年前、小学館の謝恩会でしばし話しをさせていただいた。ゆったりとした笑顔、ぼんやりとした風貌、立ち姿。ご本人自らが作品から抜け出してきたような、そんな印象を抱いたものだ。

業田さんの作品は沢山好きなものがあるが、あえてとなると僕はこの2冊を挙げる。
一つは「ロボット小雪」。見た目はグラマーでボディコンのロボットだが、その心は繊細で優しい。こんな子が側にいてくれたらな……と思わせる夢のようなロボットだ。だが、話は後半に向かうにつれ意外な展開へと進む。人間社会への痛烈な風刺だ。読んでいて手塚治虫先生の「人間ども集れ!」を思い出した。無性人間という存在を使って幸せの意味を強烈に問い掛ける作品。なんだか根底に流れる魂みたいなものが似ている気がする。

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もう一つは「機械仕掛けの愛」。ビッグコミックの増刊号に連載中である。もちろん連載当初から読んでいたが、一冊を通して読みたかったので単行本を買った。僕は第1話になっている「ペットロボ」で不覚にも涙腺を破壊された。小学校低学年くらいのお下げ髪のロボット。この娘の涙に完全にやられた。短い話の中に「切なさ」や「愛おしさ」が凝縮されている。まったく凄い話だ。

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金城さんに業田さんのマンガを紹介したら、どんな反応を示しただろうか。きっと猛烈に化学反応を起こしたような気がする。いや、僕自身お二人の作品にキョーレツに反応している。いつか業田さんの作品をシナリオに起こしてみたい。来年はそういう事もやってみたいな。

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